ハーレー・ダビッドソン
平成13年8月11日

パパサン。

名前だけは聞いたことがある。８８３ｃｃという排気量からついた愛称だ。
なぜ８８３ｃｃという中途半端な排気量なのだろう。
単に語呂合わせのために造ったのかとも思ったが、考えて見ればアメリカの会社じゃないか。
パパサンなんて日本語だろう。向こうじゃダディだ。
極悪Ｙ氏は「作ってみたら８８３ｃｃだったからじゃないの？」と言ったが、
そんなテキトーなのか？ ハーレーって。

４輪コースに出て、クルマといっしょに走る混合教習というのが一時間だけある。
この時間、大型二輪に限り、教習車はこのハーレーパパサンとなるわけだ。
後で聞いた話だが、卒業生に聞いたアンケートの中で、
「教習車に、ハーレーかＢＭを入れてほしい」という声が多くあって、それで導入したらしい。
まあ、そのアンケート書いた当の本人たちは卒業生なので乗れないわけだが。

しかしまあ、扱いにくいバイクだ。
まずウインカーの操作方法。左のウインカーは左に、右のウインカーは右にある。
それにこの右ウインカーの位置、ＣＢのセルの位置にあるのだ。扱いにくいことこのうえない。
それにそもそもこのバイク、アメリカのだだっ広い荒野を突っ走るために設計されたわけだから、
やたらとギア比が高すぎるのか、教習コースでは２速までしか入らない。
ストレートで強引に３速に入れても、ほんの一瞬だ。
おまけにタンクの下あたりに、へんな出っ張りがあるのでニーグリップしづらい。
っていうか、こういうバイクでニーグリップしてる人もあんまり見ないな。
どっちかっていうと、ガニまたスタイルで乗るバイクじゃないだろうか。
それになによりこの振動。好きな人は好きなのか？
なんかこの振動にずーっと揺られて走るのはイヤだぞ。
まあ、もっと思いっきりスピードが出せれば、またちがう感想を持つのかもしれないけど。

とにかくドラポジがしっくりこない。オフともレーレプともちがう。なんなんだ、こりゃ。
しかも、小雨がぱらついていて路面はウエット。やりづらいことこのうえない。
ま、そんなことはどうでもいいか。とにかく４輪との混合教習だ。

４輪はトロい。

だいたいにおいて、バイクの免許を取ろうとする者のは普通免許を持っている場合が多い。
まあ、極悪Ｙ氏のように先に中型二輪を取ってしまう者もいることはいるが、まず少数派とみてまちがいないだろう。
実際、今回の教習生も、全員が普通免許持ちだ。
それとは逆に、普通免許を取ろうとする者のほとんどは、初めて免許を取る人だろう。
いいとこ原チャ経験があるくらいか。
その意味でいえば、道路上で乗り物を操るということにかけては、こっちのほうが先輩なわけだ。
危険予知やスピード感覚、すべてにおいてこっちのほうが上だ。

それを裏づけるかのように、４輪教習車の遅いこと遅いこと。
ただでさえ狭いコース内。追い越しは基本的に禁止だから、そのトロトロについて行かなきゃいけないのはつらい。
ＡＴ車なんか、「ほんとにアクセル踏んでんのか？！」と疑いたくなるほどだ。
クリープ現象で走ってんじゃないだろうな。
それに、坂道発進で手間取るようじゃ、公道なんか走れないぜ。
だいたい、エンストこいて手間取るのならまだしも、
エンストもしてないのに下がってくるなんて、後で待ってたら恐怖だ。

そんなわけだから、せっかくハーレーに乗っても、感激も無いどころか、
というよりそのパワーをもてあまし気味に、ただただ適当に走り回る。
このトロさ、フラストレーションがたまる。

つまんね。

だいたい教官は、「二輪には路上教習がないので、ここで四輪と走る感覚を身に付けてください」とか言ってたが、
こんなトロいクルマに出くわすのは、年にそう何度もない。
それに公道なら「追い越し禁止」という足かせがない。（ほんとはあるんだけど、誰も守ってないでしょ？）
すべてにおいて、路上と違うこの条件下で、四輪と走る感覚を身に付けろとと言ったって、そりゃ無理だよ。
この教習、意味があるんだろうか・・・・。

教習が終わった最後に教官が感想を聞いた。

「４輪と走ってどうでした？」

邪魔だった。といわせたいのか？

？！ そうか、 そういう教習だったのか。
つまり、初心者のトロいクルマの後について走っても、イラついて攻撃的な走りをしないとか、
そういうこと教えたいわけ？

な、なんてムダなことを？！

はっきり言って、公道でたら、クルマはパイロンだ！！ って、ＭＴＸ５０Ｒでだって、そう思ったのだから。
っていうか、クルマ乗ってる立場から言わせてもらっても、トロいバイクは邪魔だぞ。
それにトロく走るなら、ＣＢのほうがはるかに走りやすいじゃないか。
なんか、パパサンの存在がむなしいぞ・・・。

なにか釈然としないまま、教官の言われるまま、車庫にハーレーを格納する。
傘を差そうか差すまいか、悩むような小雨が降っている。今年の梅雨はカラ梅雨のようだ。
ボクはふと「もう二度とハーレーにまたがることなんてないだろうな」と思った。
あれだけ文句を言っておきながら、変に名残惜しくなるとは、勝手なヤツだと、自分に苦笑した雨の夜だった。