入学資格テスト
平成13年7月28日
「では、バイクのセンタースタンドを倒してください。」
入学資格テストなんて、ちょろいちょろ〜い。
なんて思ってたボクは、教習車ＣＢ７５０の前にビビっていた。
で、でかい・・・・。近くで見ると、そうとうでかい。
「バイクって、こ、こんなに大きかったっけ？」
そらまあ、見慣れた２５０や４００に比べりゃデカいだろうが、こんなにでかいとは思わなかった。
前日、極悪Ｙ氏に、
「たぶん、教習車はＣＢ７５０やろ。あれは重いぞぉ」
と、しこたま不安にさせられたのだが、あれは決して冗談なんかではなかったと、今さらながら思い知らされた。
た、倒したらアカン
その緊張が、ボクのスモールハートをさらに萎縮させる。
センタースタンドを倒して、両手でバイクを支えるとき、
あまりの重さにバイクを倒しそうになって、おもわず、「おお〜っ！」と情けないほどの大声を上げる。
危ない！！
だが、さすが教官。年中扱っているプロは年季がちがう。
そんなとこから、この重い車体を支えられるのか？
と思うような体勢でしっかり支えてくれた。
みっともない・・・。いい歳こいた大の男が、バイク一台支えられなくてどうする！ダサすぎるわ！！
自分で自分を叱る。
しかし、教習車ＣＢ７５０、完装重量約２００ｋｇ。
重いはずだ。原チャのＭＴＸなんかメじゃない。
正直いって、これはかなりヘコんでしまった。
おいおい、こんなんで卒業できるんだろうか。それより入学できるのか？
不安だ・・・。
思えば、スキーにスケート、スノボにスケボーにローラースケート。
どれもこれもモノになりはしなかった。
人間、得手不得手があるものだ。
一所懸命がんばっても、人並みのことすらできないことだってある。それはしょうがないことだ。
極悪Ｙ氏は、「免許なんてすぐとれるよ」とカルく言ったが、
小学生の頃「クラス全員を泣かす！」 と宣言し、
片っ端からケンカを売ってまわった“魚崎のあばれはっちゃく”に、
「運動会なんて消えてなくなれ」と願ったひ弱な運痴の気持ちなんてわかるわけがない。
小学校のとき、クラスでひとりだけ登れなかった登り棒。
放課後、何度も挑戦した。毎晩、手押し車で腕を鍛えた。
だけど、結局、ボクが登り棒を登ることはできなかった。
あの苦い屈辱感が蘇る。
ムリなものはムリなのだ。努力が実を結ぶなんて、ファンタジーにすぎない。
ボクにバイクに乗るセンスなどないのではないだろうか。
いや、それよりもなによりも、超鬱な性格のボクが、
こんなアクティブなことに挑戦するなんて、キャラクタに合ってないじゃないか。
なにをトチ狂ってるのだ！ 目を覚ませ！ お前はこんな人間じゃないだろう！
思い出せ、学生時代の自分を。
カーテンを締め切った部屋で、モニタを見つめながら、ＣＭを編集して一本のビデオテープを作って独り悦に入る。
「それがお前さ！」
心の中の「超鬱岡ちゃん」が、弱気になった「アクティブ岡ちゃん」に吐き捨てる。
バイクうんぬんよりも、もっと根本的なところに疑問を感じ始めた。
ノセ上手というか、ほとんど詐欺師の素質があるんじゃないかと思ってしまうほどの手練手管の極悪Ｙ氏に、
いいようにその気にさせられたが、いきなり大型なんて考えが甘すぎたのだ。
辞めよう。今ならまだ間に合う。
すいませぇん、やっぱ辞めまぁす。
そう言おうとした瞬間、教官は。
「はい、オッケーです。」と、ヘコんだボクのきもちなど意に介さず、笑顔で言ったのだ。
へ？！ オッケーなんですか？
「重いでしょう。今、私が支えなかったら倒れてましたよ。」
いや、だから、ダメなのでは？
「じゃあ、これ持って受け付けに行ってください。」
は、はあ・・・。
不承不承で、受け付けに行く。
いいのか？あんなんで。
たしか、入学資格の最低基準は、
「バイクを支えられるだけの体力」
だったはずだ。
あれでは、支えたことにはならないではないか。
それに、確かバイクを押して八の字に周るとか、そういうのをすると聞いていたのに、それもなし。
いいのか、本当に？
受付では、まなみちゃん似だがまなみちゃんよりも愛想のいい事務のお姉さんが、
まだ少し納得のいかないボクに、愛らしい微笑みでズムーズに入学手続きを済ませてくれた。
（念のため言っておくが、ここで言うまなみちゃんとは本上さんのことではない）
その動作を眺めながらボクは、ここで愛想のいいまなみちゃんに会えたことに感謝していた。
しょうがない。
まなみちゃんがここに居るということは、
「ふぅぅん、スキにすればぁぁ」（しれーっと）
という神の啓示なのかもしれない。（ってなにが？・・・）
うん。しばらく、がんばってみよう。
強引に納得したら、少しは肝が据わってきた。
わかる人だけわかればいい！ どうせ身内ネタなんだ。おいら突っ走るぜ！
さあ、入学式は３日後だ。
| 戻る |