風になってみようか・・・。
平成13年8月16日

「あんた因島ね？」

門真運転免許試験場の免許交付受付窓口で、
ボクの卒業証明書をマジマジと見つめながら職員が聞いてきた。
こんなこと聞いてくるのは、島の人間かポルノグラフィティのファンだけである。

「あたしも土生よ」

はあ・・・。（「も」って、ボクは田熊なんだけど）

「就職でこっちに来とんの？」

って、お前もそうやろ！

まったく、どうして島の人間は島のネタばかりしゃべるのか。
このお国自慢癖は全島共通だな。ほんと、恥ずかしいかぎり・・・。

「いっそ独立してまえ」

極悪Ｙ氏はそう言ったっけ。
あんな小さな島、独立なんかしたら、いっぺんに破綻だな。
日本からＯＤＡを受けなければ。


今日は雨だ。湿気がすごい。Ｇパンがベタベタして不快だ。
梅雨明け宣言が出たとたん、いきなりの雨だ。まったく、日本の梅雨は一筋縄ではいかないな。
できればこんな日に門真の免許試験場にきたくはなかったのだが。
卒業検定に合格したとたん、いきなり出張の命令が下ったのだ。

「明日から行ってくれ」

まったく、会社というのは容赦がない。
本来なら、定時退社日である水曜日に半休を取って、免許交付に行こうと思っていたのだが。
どうやら今週は帰れそうもないようだ。
まあ、すぐにバイクを購入する予定のないボクは、そんなにあわてて免許を交付してもらう必要もないのだが、
免許取得一年未満は、違反等でなにかと不利だし、さっさと交付してもらったほうが得だろう。

じゃあ、今日半休ください。

とまあ、そんなわけで、ここにきているわけだ。

しかし、いいタイミングで卒業できた。幸運だった。
８月からは一ヶ月以上、海外出張に行かされることになった。
一ヶ月も日本に帰れないんじゃ、もし卒業が長引いていたらとんでもないことになっていただろう。
当初、盆明けまでに卒業できればと考えていたのだが、結局２週間とちょっとという短い期間で卒業してしまった。
ほんとうに運がよかった。

そんなわけで、窓口のオバサンと上記のようなやり取りをするハメになった。
１２時４５分に受付を済ませたのだが、交付のための写真撮影は２時４０分からだという。

まだ２時間もあるじゃないか。
湿気でジメジメの雨の町に出たくはないのだが、いたしかたない。
近くではらごしらえでもしておこうか。

しかし、時間帯が時間帯だ。こんな真昼間の試験場周辺。どこもいっぱいだろう。
案の定、ロイホは客でいっぱいだ。だけどステーキ１なんか行きたくないし、マクドもなんかイヤだ。
しょうがない、比較的すいているケンタにでも入るか。気はすすまないけど・・・。

テリヤキチキンサンドのセットをたのむ。
売り子のお嬢さんが、
「お飲み物をＬサイズになさいますと、今ならカーネルおじさん人形がついてきますよ」
と笑顔で勧めてきた。

そんな人形、欲しくもない！ ガキじゃねぇんだぞ！

と思ったが、まだまだ時間までは長丁場だ。
ここはＬサイズにしておくほうが、長居ができて無難だろう。
決してそんなくだらない人形が欲しくてＬサイズにするんじゃないんだぞと、
言い訳顔で勘定をすませる。

テリヤキチキンサンドをほおばりながら、司馬先生の「花神」を読む。
久々にのんびりした雰囲気だ。
このところ忙しかったからなあ。楽しかったけど。

窓の外を見下ろすと、交差点は渋滞だ。クルマがひしめきあってる。
そこをずぶぬれのライダーがすり抜けてゆく。
今まで関心すらなかった車種が気になる。

☆☆☆

そろそろ時間だ。
ボクは「花神」を閉じた。
ケンタを出るとき、雨は止んでいた。
西の空は雲が晴れてきている。どうやら天気は回復しそうだ。
相変わらず門真の道路は渋滞しているけれど、今日はＭＲ２の屋根を外して走ろう。
途中、雨が降ってもいいじゃないか。濡れて走るのも一興だ。
バイクに乗れるのはいつになるかわからない。
だからこそ、今日、


風になりたい。