卒業検定が受けられない？！
平成13年8月14日

「今から名前を呼ぶ人は、教習原簿を受け取って、４階の講義室に集まってください。」

集合時間の２０分前からロビーで待っていたボクはすでに緊張していた。
とうとう卒業検定だ。これが最後。これに合格すれば、晴れて免許がもらえる。
検定コースはしっかり頭に入っている。安全確認も完璧だ。特別課題だって失敗しなくなった。しかし・・・・。

本番に弱いのがボクの悪いところ。ようするに度胸がないのだ。ヘタレである。
あれだけ苦労した一本橋。確かに全然落ちなくなったけど、万が一この場面で失敗したら、即失格なのだ。
それで試験は中止。チャンスは一回だけ。
ダメだ。気の弱いボクには、このプレッシャーには耐えられない。ボクの心拍数は１１０前後に達していた。
その間、この日検定を受ける人の名前が順々に呼ばれていく。呼ばれたものは順次階段を昇っていく。
そして、全員の名前を呼び終わった。

？

おかしい、ボクの名前は呼ばれていない。聞き逃したか？
いや、そんなはずはない。
ボクは教育原簿を受け取っていないのだ。
原簿に余りがあれば、受付のお姉さんは気付くだろう。なのに平然としているではないか。

検定の予約は前日に、受付のお姉さんに操作方法を聞きながらやったのだ。
予約に失敗したということはありえない。

ボクが事情を聞こうと受付に近づこうとすると、
他にも呼ばれていない人がいたのか、何人か不審顔で受付に近づいた。
そこで、受付のお姉さんは、「あ、４輪の方はまだですよ。」といった。
その言葉に全員が引き下がった。ボク以外は・・・。

あの、昨日予約したはずなんですが・・・。

「えっ二輪の方ですか？」

そうです。

「えっと、昨日教習受けられました？」

・・・・。

それがいったい何の関係があるというのだ。
確かに昨日教習を受けた。昨日みきわめをもらったのだ。
すぐ検定予約をしようとしたが、予約機の操作方法がわからなかったので、あんたに操作方法を聞いただろう！

なんてことだ。のっけからトラブルだ。恐れていたことが起きてしまった。なんでよりによってこのボクが。
やはりこういう運命なのか。どうもボクは運命に嫌われているようだ。

昨日の最後の教習だってそうだ。みきわめがかかっているというのに、ボクはバイクをコカしてしまった。
今まで一度だってコケたことなんてないのに、である。
目の前を走っていたトロい中型教習の女の子が、何を思ったのか、Ｓ字の出口でエンストこいたのだ。
対向車も無いし、スムーズにＳ字を抜けてくれるとばっかり思っていたボクは、
あわてて、前ブレーキをかけてしまった。
Ｓ字では後ブレーキが鉄則であるにもかかわらず。その拍子に転倒したのだ。
まあ、ＭＴＸの時にも立ちゴケは経験しているので、あわてずにリリースできたが、
よりによってなんでみきわめの時に。という思いに、不吉なものを感じていたのだ。

そもそもボクはまるでこの世の不幸を全部背負ったように運が悪い。
「不幸の星のもとに生まれる」というのはこういう人生を言うのだろう。

初めて買ったステレオデッキは、ヘッドのネジ止めがゆるんでいたせいで、
再生すると、Ａ面Ｂ面同時に聞こえた。
初めて買ったレコードプレーヤーは、針に問題があったらしく雑音だらけだった。
初めて買ったレーザーディスクは映像が出なかった。
３度目に買ったビデオは１年でヘッドがつぶれた。
極悪Ｙ氏にだまされて買ったＰＳはすぐターンテーブルが動かなくなった。
初めて出場した市民マラソン大会では、なぜかボクのゼッケンだけなかった・・・・・。


誰かの言葉にあったっけ。

無意味で不条理な災難が世の中には転がっていて、だれに当たるかは判らない。
「なぜ、自分が」と思うのは、傲慢だ。
ただ、ランダムに混ぜられた幸運不運のくじを、平等にひいただけのことだよ。

受付のお姉さんが、ボクの検定予約を確認している間、ボクはその言葉をかみ締めていた。