縁があったら・・・。
平成１２年１月６日

うちの母は、出かけるときに「行ってきます」と言うと、「縁起が悪い」と言って怒る。
だからうちでは出かけるとき、「行って帰ります」という。
当然、それに対しての言葉は、「いってらっしゃい」ではなく、｢行って帰り」なのである。
盆と正月くらいしか、実家に帰ることがなくなった今でも、実家を出るときはこういう。
まあ、古い人間ほど『言霊』を気にするものだろう。
そういう親に育ってしまうと、妙にそのへんのところを意識してしまうものだ。
従って僕は、友人と別れるとき、「さよなら」とか「バイバイ」とかいった言葉を使わない。
これらは、基本的に「今生の別れ」の場面で使用するべきものだと考えているからだ。
だから、こういう場合、普通、「じゃあ、また」とか、「ほしたら、また」とか、そういう言い回しを使うようにしている。
我ながらバカバカしいとは思うが、これも母親の影響だろう。

だいぶ昔の話になるが、僕はとある女のコに、「縁があったらまた逢いましょう」と言って、お別れのあいさつをしたことがある。
後日、何かの縁でそのコと再会したとき、
「縁って言葉、好きなんですよ」
と、あのときのあいさつを妙な感動を持って覚えていてくれた。
しかし、僕が「縁があったら」と言うときは、「あなたと会うことはもう二度とないでしょう」という意味なのだ。
縁でもなけりゃ会う機会なんかないでしょう。だから「縁があったら逢いましょう」なのである。
まあ、こういう場合、誤解させたままでいいんだろうけど